安定同位体比分析
安定同位体比とは
生物は炭素を骨格とし、窒素・酸素・水素などから主に構成されます。これらの元素には、質量数が異なるものが存在し、これを同位体と呼びます。この同位体には、放射能をもつ放射性同位体と、放射能を持たず、天然に一定割合で安定に存在し、人体にも安全な安定同位体があります。この安定同位体の組成を比率で表したものが安定同位体比(13C/12C,
15N/14N, 18O/17O/16O , D/H )です。
安定同位体比は、栄養源や生育水といった生育環境を反映するため、同一の生物でも生育地域によって異なる値を示します。つまり、生物の安定同位体比は、DNA分析とは異なり、同一生物でも、生育環境を反映し、異なる値を示すことから、生物固有の“化学指紋”と言えます。安定同位体比分析は、学術的な方面だけではなく、食品・環境・医薬品など多方面への応用が期待されています。
安定同位体比を用いて食品の産地判別の可能性を探る
安定同位体比は、元素によって反映するものに特徴があります。炭素同位体比は、トウモロコシやサトウキビの値が特徴的であり、糖添加や原料判別に用いられています。雨水の酸素同位体比については、世界分布が報告されており、地域によって異なることが知られています。生物の酸素同位体比はその生物が摂取した「水」の安定同位体比を主に反映することから、産地判別手法として期待されています。
日本認証サービスでは、安定同位体比の分析によるトレーサビリティ検証や、由来識別など、安定同位体比分析を食品や、その他産業用途に適用する為の研究及び技術開発を行っています。
<参考文献>
「安定同位体比解析による国産・豪州産・米国産牛肉の産地判別の可能性」、中下留美子ら、 日本食品科学工学会誌, 55, 191-193, 2008.
「生元素安定同位体比解析によるコシヒカリの産地判別の可能性」、鈴木彌生子ら、日本食品科学工学会誌, 55, 250-252, 2008.
「生元素安定同位体比解析による養殖ウナギの産地判別の可能性」、中下留美子ら、 日本食品科学工学会誌, 56,495-497, 2009.
果汁・ハチミツへの異性化糖混入の判別例
植物の炭素安定同位体比の特徴として、光合成経路の異なるトウモロコシやサトウキビといったC4植物については炭素同位体比が他の植物に比べて大きいことが挙げられます。つまり、果汁やハチミツそのものが持つ炭素同位体比よりもC4植物由来の異性化糖の同位体比は高いことから、糖添加の判別へ応用されています。
本法は、ハチミツにおいてはAOACによる公定法となっており、平成19年5月に独立行政法人・農林水産消費安全技術センター(FAMIC)が実施した「はちみつの表示に関する重点調査」においても用いられました。
食品の産地判別例:ウナギ
近年、食品の産地偽装事件が続発する中で、食品表示への信頼性が強く求められています。DNA識別や微量元素組成といった技術に加え、安定同位体比も注目を集めています。 地域差を反映する技術である酸素同位体比は、産地判別においてキーポイントとなります。日本認証サービスでは、この技術を食品分析へ応用し、コメ・牛肉・ウナギの産地判別技術を開発するなど、新たな産地判別技術の可能性を検討しています。
ウナギの国産・輸入判別は、主にDNA分析(日本種または外国種)によって行われてきました。しかし、日本種の輸入ウナギについては、DNA分析だけでは判別が困難であり、産地偽装問題が後を絶ちません。 安定同位体比は生育環境を反映することから、この技術をウナギへ応用し、総合的に評価した結果、国産と輸入で特徴的な分布を示すことが分かりました。活鰻と同様に蒲焼や白焼きなどの加工品への応用も可能であり、ウナギだけではなく、様々な食品への応用が期待されます。
